自分史

性別不合(性別違和)の診断をおこなうときに必要な、幼少からの生育歴を記載した文章(ライフヒストリー)。

性別不合(性別違和、性同一性障害とも呼ばれる)に関する診断において、自分史(またはライフヒストリー)は非常に重要な役割を果たします。自分史とは、本人が生まれてから現在に至るまでの自身の経験や感情、自己認識、社会的な役割の変遷などを詳細に記録したものです。これにより、本人が抱えている性別に関する違和感や、それに伴う問題の理解が深まります。

自分史の内容

自分史には、以下のような内容が含まれます:

  1. 幼少期の記憶: 性別に関する最初の認識や、子供時代の遊び、友達関係、家族との関わり、学校での経験など、幼少期の出来事や感情。
  2. 思春期の経験: 第二次性徴期における体の変化や、それに対する違和感、恋愛感情や性的指向、社会的性役割の意識など。
  3. 現在の状況: 現在の性別認識、性自認に関連する感情、社会的な役割や関係性(家族、友人、職場など)、現在の生活で感じる性別に関する困難や問題。
  4. 過去の試みと対応: 性別違和感に対する自己対処の試み(例えば、服装や行動を変える試み、カミングアウトの経験、治療やカウンセリングの利用など)。
  5. 未来の希望や目標: 性別に関する自己認識の今後の目標や望む生活像、社会的・医学的介入の希望(ホルモン療法や手術など)。

診断における自分史の役割

自分史は、以下のような目的で診断に活用されます:

  • 本人の自己認識の理解: 自分史を通じて、医療従事者は本人の性別に関する違和感の具体的な内容と、その背景にある要因をより深く理解することができます。
  • 診断の精度向上: 性別不合の診断において、自分史は重要な情報源であり、誤診を防ぎ、適切な診断を行うために役立ちます。
  • 治療計画の策定: 自分史に基づいて、本人の希望や目標に合った個別的な治療計画が立てられます。たとえば、ホルモン療法や性別適合手術の適応を判断する際に重要です。

自分史の作成

自分史を作成する際は、時間をかけて丁寧に記録することが大切です。日記形式や、カウンセリングセッションでの口述など、様々な方法で作成されます。カウンセラーや医師のサポートを受けながら、自分の感情や経験を整理することが一般的です。

自分史は性別不合の診断プロセスにおいて、重要な資料となり、医療者が適切な支援を提供するための基礎資料となります。●