性別不合(Gender Incongruence)は、以前は性同一性障害(Gender Identity Disorder)や性別違和(Gender Dysphoria)とよばれていました。自分の認識する性別(ジェンダー・アイデンティティ、性自認)と生まれたときに割り当てられた性別が一致しない状態を指します。この状態は、個人が性別に関する強い違和感や不快感を感じることがあり、これが長期にわたって続く場合、心理的な苦痛や生活の質に影響を与えることがあります。
ICD-11での扱い
国際疾病分類第11版(ICD-11)では、性別不合は「性的健康に関連する状態」として分類されています。ICD-11では、性別不合は精神障害としてではなく、医療支援が必要な健康状態として認識されています。この変更は、性別不合に対するスティグマ(偏見)を減らし、必要な医療支援を受けやすくすることを目的としています。
ICD-11では、性別不合は年齢によって「児童期の性別不合」と「成人期および思春期の性別不合」に分けて記載されており、それぞれの年齢層に適した対応が求められています。
DSM-5での扱い
アメリカ精神医学会(APA)の「精神疾患の診断と統計マニュアル第5版」(DSM-5)では、性別不合は「ジェンダー・ディスフォリア」(Gender Dysphoria)という用語で扱われています。DSM-5では、性別不合そのものを病気とみなすのではなく、性別不合による強い苦痛や生活の質の低下がある場合に診断が行われるという立場を取っています。
DSM-5の診断基準では、性別不合による持続的な苦痛が最低6か月以上続くことが条件とされ、年齢や性別に応じて具体的な診断基準が設定されています。
まとめ
性別不合は、個人の性別アイデンティティと身体的性別が一致しない状態を指し、ICD-11とDSM-5で異なる形で扱われています。ICD-11では、性的健康に関連する状態として分類され、精神障害とは区別されています。一方、DSM-5では、性別不合による苦痛や機能障害に焦点を当て、「ジェンダー・ディスフォリア」として診断されます。いずれの分類でも、性別不合は適切な医療や心理的支援を受けるために重要な概念として認識されています。★●